マラソン本番を目前に控えた前日、何を食べるかによって当日の走りが大きく左右されることをご存じでしょうか?「せっかく練習を重ねてきたのに、体が重くて思うように走れなかった…」そんな後悔を防ぐためには、前日の食事計画が非常に重要です。本記事では、栄養学とスポーツ科学に基づいた、マラソン前日に最適な食事方法を徹底解説します。初心者から上級者まで、どんなレベルのランナーにも参考になる情報が満載です。
こんな人におすすめの記事:
- マラソン前日に何を食べたらよいか迷っている方
- パフォーマンスを最大限に引き出したいランナー
- 胃腸トラブルや体調不良を避けたい人
- タイム短縮を狙う上級ランナー
- 食事で後悔した経験がある初心者ランナー
目次
マラソン成功のカギは前日にある!食事が結果を左右する理由
マラソンは長時間にわたる有酸素運動であり、前日に摂取する栄養が走行中のエネルギー供給に直結します。特にエネルギー源となる「糖質(炭水化物)」の適切な摂取は、後半のバテ防止やタイム維持に不可欠です。また、胃腸の調子や水分バランスを整えることも、レース当日のコンディションを大きく左右します。つまり、前日の食事は「レースの準備の最終仕上げ」と言えるでしょう。
正しい食事戦略を取れば、前日の夜からマラソンは始まっているのです。
なぜ「前日」の食事が重要なのか?科学的な根拠を解説
マラソンのような長距離競技では、グリコーゲン(体内の糖質貯蔵量)が大きな役割を果たします。グリコーゲンは主に肝臓と筋肉に蓄えられ、運動中にエネルギーとして使われます。しかし、体内のグリコーゲンには限界があり、約90分~120分程度の運動で枯渇してしまいます。これが「30kmの壁」と呼ばれる現象の原因の一つです。
前日にしっかり糖質を摂取することで、このエネルギー枯渇を予防できます。
実際に、グリコーゲンローディング(カーボローディング)を行ったランナーは、そうでないランナーに比べてタイムや完走率が有意に向上するという研究結果もあります(Bussau VA, 2002)。
また、消化に優れた食材を選ぶことにより、胃腸のトラブルを予防し、レース中のストレスも軽減されます。特に緊張によって胃腸の働きが落ちやすい人には、消化に負担をかけない食事が推奨されます。
表:前日食事が関与するマラソンパフォーマンスの要素
食事項目 | マラソンへの影響 |
炭水化物(糖質) | グリコーゲン貯蔵 → 後半のスタミナ維持に寄与 |
タンパク質 | 筋肉の修復 → 翌日までの疲労回復 |
脂質 | 摂りすぎは消化不良・胃もたれの原因に |
食物繊維 | 摂りすぎはお腹のハリやトイレの回数増加につながる |
水分・電解質 | 体温調整・持久力維持 |
北野 優旗
前日だからといって特別なことをするのではなく、あくまで「整える日」と考えてください。暴飲暴食や慣れない食材は避けて、いつもよりちょっと意識的に“走るため”の体を作る意識が大切です。
科学的根拠:Carbohydrate loading in human muscle: an improved 1 day protocol(ヒト筋肉への炭水化物負荷:改良された1日プロトコル)
カーボローディングって何?初心者にもわかる炭水化物戦略
マラソン前日に必ず耳にするのが「カーボローディング」という言葉。これは、エネルギー源となる糖質(炭水化物)を意識的に多く摂取し、筋肉と肝臓にグリコーゲンを最大限蓄える戦略です。特にフルマラソンやハーフマラソンなどの長距離では、終盤にガス欠を起こさないための大切な準備とされています。
初心者でも実践しやすい1日集中型カーボローディングで、翌日の走りを劇的に変えましょう。
グリコーゲンとは?体内のエネルギータンクを満たす仕組み
グリコーゲンは体内で貯蔵される糖質の形態で、主に筋肉と肝臓に蓄えられています。運動中に必要なエネルギーが不足すると、グリコーゲンが分解されてグルコースとなり、血中に放出されます。このエネルギー供給がスムーズに行われることで、筋肉の動きを安定して維持できるのです。
グリコーゲンの蓄積量は、体重1kgあたり約80~100gと言われており、トータルで2000kcal~2500kcalのエネルギーに相当します。マラソンの消費カロリーは約2500~3000kcalにもなるため、前日までにグリコーゲンを満タンにすることが非常に重要です。
研究によれば、糖質摂取量を体重1kgあたり10g程度に設定することで、1日で十分な蓄積が可能(Bussau VA, 2002)。例えば、60kgのランナーであれば約600gの糖質が必要です。
北野 優旗
糖質ばかりに偏ると胃もたれや血糖値の急上昇にもつながります。白米やパスタを中心にしつつも、フルーツやイモ類などで自然な糖質を補うのがおすすめです。
科学的根拠:Carbohydrate loading in human muscle: an improved 1 day protocol(ヒト筋肉への炭水化物負荷:改良された1日プロトコル)
実践のポイント:どのくらい・何を・いつ食べればいい?
カーボローディングを成功させるカギは「計画的な糖質摂取」と「食事内容のバランス」です。前日にどのタイミングで何を食べるかを考えることで、無理なくエネルギーを蓄えることができます。
「量」よりも「質」を重視したカーボ摂取が疲労を残さないコツです。
以下のタイムスケジュールに沿って、1日で効果的に糖質を蓄積する例を紹介します。
時間帯 | 食事例 | 目的 |
朝食(7:00~8:00) | 白ごはん+卵焼き+味噌汁+バナナ | 一日のエネルギー基盤を作る |
間食(10:00) | おにぎり+スポーツドリンク | 小まめに糖質補給 |
昼食(12:00~13:00) | パスタ(ミートソース)+サラダ+フルーツ | 主に筋肉グリコーゲンを補う |
夕食(18:00~19:00) | 白ごはん+焼き鮭+かぼちゃ煮+スープ | 睡眠中の回復と翌日の備え |
北野 優旗
「糖質だけ」に偏らず、少量のたんぱく質やビタミンを摂ることも忘れずに。炭水化物だけのメニューは血糖値スパイクを招きやすく、体調を崩す原因になります。
失敗例に学ぶ!やりすぎNGなカーボローディングの罠
やりがちな失敗のひとつは「糖質の摂りすぎによる胃腸トラブル」です。意識しすぎるあまり、白米やパスタをドカ食いしてしまう人もいますが、それでは逆効果。翌朝の胃もたれや下痢に繋がり、パフォーマンスを大きく下げるリスクがあります。
「食べなければ!」という思い込みが、かえってレースの失敗を招くこともあります。
また、以下のような誤ったカーボローディングの例もよくあります。
- 炭水化物のみ摂取してビタミン・ミネラルが不足
- 慣れない食材を試して消化不良に
- 夕食を遅く取りすぎて、睡眠の質が低下
成功のポイントは、「日頃から食べ慣れているもの」をベースに、炭水化物の割合を意識的に増やすこと。何より大切なのは、「体調を崩さない」ことです。
北野 優旗
炭水化物を「意識的に増やす」ことと「無理に詰め込む」は全く別物。満腹まで食べる必要はありません。60~70%の満足感を目安にしてみてください。
前日NGフード&避けたい食習慣リスト
前日の食事で「何を食べるか」は非常に大切ですが、それ以上に「何を避けるか」も重要です。特にマラソンという長時間の運動においては、胃腸トラブルやエネルギーダウンのリスクになる食材・習慣を事前に避けておくことが完走への近道です。以下では、具体的にNGとされる食事例とその理由を解説します。
「これくらい大丈夫だろう」が、当日最大の敵になることがあります。
胃腸を荒らす!高脂肪・高繊維の食べ物に要注意
脂肪分の多い食べ物は消化に時間がかかるため、胃腸に大きな負担をかけます。特に揚げ物や脂の多い肉、バターやチーズを多用した料理は、レース中の胃の不快感や腹痛の原因になります。また、野菜や豆類、全粒粉パンなどに含まれる食物繊維も、前日は控えめにするのがベターです。
脂っこいものと食物繊維の取りすぎは、トイレの回数を増やしレース中の集中力を下げる原因となります。
以下は避けた方が良い代表的な食品とその理由です:
- 揚げ物(とんかつ、唐揚げなど):消化が遅く、胃もたれの原因
- チーズ・バターなどの乳脂肪:下痢や腹痛を起こしやすい
- サラダ大量摂取・豆料理:繊維が腸を刺激しやすい
- ナッツ類:脂質と繊維が豊富で消化に時間がかかる
北野 優旗
レース前日は「優しさがすべて」。胃腸に優しい食材を選び、消化の負担をできるだけ減らすよう心がけましょう。特に便秘体質の人は、2~3日前から調整しておくと安心です。
食中毒のリスクを避けるには?避けるべきメニュー
意外と見落とされがちなのが、食中毒のリスク。普段は平気なものでも、緊張や疲労がある状態では免疫が下がり、食あたりの可能性が高くなります。マラソン前日は「加熱された安全な食事」を第一に選びましょう。
マラソン前日は“生もの厳禁”が鉄則。火を通した食材を心がけましょう。
以下は控えたい食品群です:
- 刺身・寿司などの生魚
- ユッケ・レバ刺しなどの生肉
- 生卵(温泉卵はOK)
- 加熱されていない貝類・海鮮類
また、冷めたお弁当や持ち帰り惣菜も、保存状況によっては食中毒の原因になることもあります。特に夏場や湿度の高い時期は要注意です。
北野 優旗
「食あたりの心配がある食事は、たとえおいしくても避ける」のが鉄則。体調を崩したら、どんなに走力があっても意味がありません。
飲み物にも落とし穴が!アルコール・カフェインの影響とは
食事だけでなく「飲み物」も大きな注意点があります。特に避けるべきはアルコールとカフェイン飲料です。
水分補給のつもりが、逆に脱水を招く危険がある飲み物も存在します。
- アルコールは利尿作用が強く、体内の水分と電解質を失いやすくなります。さらに、肝臓に負担がかかり、翌日の疲労感が抜けにくくなるため絶対に避けるべきです。
- カフェイン(コーヒー・エナジードリンクなど)は一時的に覚醒効果があるものの、同じく利尿作用があるため脱水リスクがあります。また、夜間に飲むと睡眠の質が低下し、回復が遅れます。
避けるべき飲み物:
- ビール・ワイン・日本酒・焼酎
- エナジードリンク(モンスター、レッドブルなど)
- コーヒーやカフェラテ(午後以降)
北野 優旗
前日は“水と麦茶”が最強の味方。冷たすぎる飲み物は胃腸に刺激になるので、常温?ぬるめで飲むのがおすすめです。電解質を含むスポーツドリンクも適量ならOK。
マラソン前日におすすめの食事例とスケジュール
前日食の基本は「整える」「ためる」「休ませる」。それぞれの時間帯で、目的に合った食事を選ぶことが、マラソン当日の体調とパフォーマンスに直結します。ここでは朝・昼・夜ごとにおすすめの食事例とその理由、さらに1日の水分補給スケジュールまでを紹介します。
「時間帯別」に意識を変えるだけで、体が劇的に変わることがあります。
朝・昼・夜の時間別にベストな献立を紹介
朝食、昼食、夕食はすべて“エネルギー蓄積”を意識しつつも、消化の負担を軽減する献立が理想です。特に夕食はレースまでの最後の本格的な食事となるため、糖質中心かつ胃に優しいメニューを選ぶ必要があります。
以下は、時間帯別のベストな献立例です。
食事時間帯 | 献立例 | ポイント |
朝(7:00~8:00) | 白ごはん+卵焼き+味噌汁+バナナ | 胃腸に優しく糖質とたんぱく質を補給 |
昼(12:00~13:00) | 親子丼+小鉢の煮物+りんご | 一日の中でエネルギーを最も効率よく吸収 |
夕(18:00~19:00) | 鮭の塩焼き+ご飯+かぼちゃの煮物+わかめスープ | 寝るまでに消化できるよう低脂肪・高糖質に |
「普段から食べ慣れている和食中心の献立」が最も安心かつ効果的です。
また、間食を適切に挟むことで血糖値を安定させ、効率的なグリコーゲン蓄積が可能になります。
- 10:30頃:おにぎり or 小さめパン+麦茶
- 15:00頃:バナナ or エネルギーバー+常温の水
北野 優旗
「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」が大切。夕食は就寝の3時間前までに終えるのが理想。夜遅くの糖質摂取は消化不良や眠りの質低下につながるので注意しましょう。
実際のランナーのルーティンを参考にしよう
トップランナーや経験豊富な市民ランナーの前日ルーティンを分析すると、共通点が見えてきます。栄養バランスの取れた食事を基本にしつつ、精神的なリラックスや胃腸の負担を避ける工夫が光ります。
「前日の過ごし方=当日の結果」に直結することは、多くのランナーが実感しています。
たとえば、以下のような前日スケジュールを実践しているランナーが多いです。
- 6:30 起床 → 水分補給(白湯や常温水)
- 7:00 朝食(ご飯+味噌汁+卵)
- 10:30 軽めの間食(バナナ or カステラ)
- 12:30 昼食(パスタ or 丼ぶり)+ゆっくり休憩
- 15:30 軽食(エネルギージェル or おにぎり)+軽くストレッチ
- 18:00 夕食(和食中心の消化に良いもの)
- 21:30 就寝前に少量の水+リラックスタイム
このように、食事・水分・休息・睡眠をセットで捉えることが非常に重要です。
北野 優旗
「食べて走る」のではなく「整えて走る」意識を。新しい食材に挑戦するのではなく、いつもどおり・いつも以上に丁寧に。リラックスした1日が、翌朝の自信と走りの力になります。
前日の水分補給はどうする?飲み方のコツ
食事と並んで重要なのが「水分補給」。前日にどれだけ適切に水分と電解質を摂れているかが、レース中のパフォーマンスや脱水予防に影響します。
「脱水はすでに前日から始まっている」ことを忘れてはいけません。
推奨されるのは以下のような摂取方法です:
- 起床後~朝食までに200~300mlの水(常温)
- 午前・午後に分けて500ml程度の水分+塩分少量
- スポーツドリンクや経口補水液を1~2回取り入れるのも可
- 寝る直前には控えめに(100~150ml)+トイレ対策も忘れずに
避けたいのは「がぶ飲み」や「冷たい水の一気飲み」です。胃を冷やしてしまい、かえって吸収効率を下げてしまいます。
北野 優旗
「水は走るための血液」です。身体の潤滑剤として前日から意識的に摂りましょう。特に汗をかきやすい体質の人や、気温が高い大会では前々日からの水分戦略が勝敗を分けます。
タイプ別!あなたに合った前日食事戦略
マラソンランナーといっても、全員が同じ体質・目的ではありません。初心者と上級者、さらにはフルマラソンとハーフマラソンとでも、必要なエネルギーやリスク管理は異なります。ここでは「タイプ別」に合わせた最適な食事戦略を紹介し、自分にぴったりな前日食を見つけられるようサポートします。
“万人向け”の食事ではなく、“自分向け”の戦略こそが結果を変えるポイントです。
初心者ランナー:胃に優しく、安心して走れる食事
マラソン初心者にとって最も大切なのは「胃腸トラブルを起こさないこと」。経験値がまだ浅いため、多少の失敗がレースのコンディションに大きな影響を与える可能性があります。
“食べ過ぎない、でも足りないこともない”が初心者の鉄則です。
以下のような特徴的な工夫が求められます。
- 食べ慣れた食材を選ぶ:消化に負担がかからないことが最優先
- シンプルな調理法を選ぶ:焼く・煮るなどで油分を控える
- 和食中心の献立:白ご飯・味噌汁・焼き魚など胃に優しく安心感がある
- 水分補給もこまめに:少量ずつ回数を分けて補給する
おすすめのメニュー例:
食事 | メニュー | 備考 |
朝 | 白米+焼き海苔+目玉焼き+りんご | 朝から糖質+少量タンパク質 |
昼 | うどん+かぼちゃの煮物+バナナ | 消化しやすい炭水化物中心 |
夜 | 鮭の塩焼き+ご飯+味噌汁+さつまいも | 定番和食で安心感と安定感 |
北野 優旗
「慣れてない食事」に手を出さないことが何よりも大切です。コンビニで済ませる場合も、脂質の少ないおにぎり・和風惣菜・ゼリー飲料を選ぶのが基本です。
タイム狙いの上級者:最大限パフォーマンスを引き出す食事
上級ランナーは「完走」よりも「タイム」を重視するため、より緻密なカーボローディングと、体調コントロールが求められます。消化速度やエネルギーの質にまで目を配ることが、結果に直結します。
“燃費の良さ”と“走行中の安定感”を両立する食事こそが鍵です。
上級者の戦略例:
- 体重×10gの糖質摂取を意識する(例:60kgなら600g)
- 夕食は2段階に分けて摂取する(18時と20時など)
- 前日は可能な限り動かずエネルギー消費を最小限に抑える
- ビタミン・ミネラル補給をサプリで管理するのも有効
おすすめの食品:
- 白米、うどん、もち、パスタ、コーンフレークなど高GI食品
- 果物(バナナ、キウイ)、低脂肪乳製品(ヨーグルト)
- 甘酒、スポーツドリンク、補給ジェルなど液体糖質
北野 優旗
細かく糖質量を計算するのは良いですが、ストレスになりすぎないように。試合に向けて「最善の準備ができた」と感じる安心感が最大のパフォーマンスブースターです。
フルマラソン vs ハーフマラソンで食事内容は変えるべき?
フルマラソン(42.195km)とハーフマラソン(21.0975km)では、必要なエネルギー量が大きく異なります。それに応じて、前日食の「量」「質」も変えていく必要があります。
“走行距離の長さに応じた食事戦略”が、体をラクにしてくれるカギとなります。
比較ポイント:
項目 | フルマラソン | ハーフマラソン |
糖質摂取量目安 | 体重×8~10g | 体重×5~7g |
夕食の時間 | 18:00~19:00推奨 | 19:00でも可 |
補給ジェル | 前日1~2本試飲も視野 | 基本不要だが好みに応じてOK |
食事ボリューム | しっかり3食+軽食 | 2.5食分でも十分可 |
フルでは“エネルギー持続”がテーマ、ハーフでは“動きやすさ・軽さ”がテーマとなります。消化にかかる時間や食べるタイミングにも注意しましょう。
北野 優旗
どちらの距離でも「胃腸の負担を感じずに寝られるか」が重要です。食後にすぐベッドに入るのではなく、軽いストレッチや読書などでリラックスしてから眠るようにしましょう。
当日の朝食とスタート前の最後の補給
いよいよマラソン当日。ここまで準備してきた食事戦略の仕上げが「当日の朝食と直前の補給」です。緊張で食が進まない方も多いですが、エネルギーを切らさず、かつ胃腸に負担をかけない“質と量”のバランスがカギになります。
「朝食を制する者が、マラソンを制する」これは多くのランナーが実感している鉄則です。
朝食はスタート何時間前に?適量とタイミング
マラソン当日の朝食は、スタートの「3~4時間前」がゴールデンタイムです。この時間帯で食べることで、消化吸収が終わり、血糖値も安定した状態でスタートラインに立つことができます。
レース開始の4時間前を目安に、消化しやすく高糖質な朝食を摂りましょう。
理想の朝食の特徴:
- 炭水化物中心:白米・パン・うどん・おにぎりなど
- 少量のタンパク質:卵・ヨーグルト・プロテインドリンクなど
- 水分も一緒に摂取:温かい味噌汁やスープがおすすめ
- 脂肪・繊維は控えめに
例)スタートが9:00の場合の朝食スケジュール:
- 5:00 起床 → 常温の水を一杯(200ml)
- 5:30 朝食 → おにぎり2個、バナナ、味噌汁、ゆで卵1個
- 6:30~7:00 軽いストレッチ・準備 → 着替えなど
また、寝起き直後は食欲がない方も多いため、消化の良いゼリー飲料や白湯で胃を温めると食欲が戻りやすくなります。
北野 優旗
「空腹」でも「満腹」でもNGです。ちょうどよい“腹六~七分目”を目指すと、走り出しがとてもラクになります。レースの数日前から朝食時間を「本番に合わせておく」とさらにベストです。
おにぎり・バナナ・ゼリー…おすすめの軽食まとめ
スタート直前には「軽く・速やかにエネルギーになる」補給が有効です。ここでは、消化に優れた定番の“スタート前軽食”を紹介します。
“走りながらエネルギーを使える体”を作るには、糖質補給が不可欠です。
おすすめの軽食アイテムと特徴:
軽食 | 特徴 | タイミング目安 |
おにぎり(具は梅・昆布など) | 消化が良く持ち運びも楽 | スタート90~120分前 |
バナナ | ビタミンB群も摂れる | スタート60~90分前 |
エネルギーゼリー | 吸収が早くて手軽 | スタート30~60分前 |
甘酒(米麹) | 糖質とアミノ酸が豊富 | スタート60分前 |
スポーツドリンク | 電解質補給も同時に可能 | スタート前~直前 |
なお、カフェイン入りジェルなどはレース中盤での使用を想定した方がベターです。
北野 優旗
「口に入れるものはすべて“レース当日仕様”にしておくこと」。普段食べない物を本番で試すのは危険です。試走日などで、事前に“お腹に合うか”を確認しておきましょう。
スタート直前に食べてもOKなエネルギー補給は?
スタート30分前までに摂っても大丈夫な軽食は、基本的に「液体」や「半固形」の糖質食品に限定されます。走る直前に固形物を摂ると、胃に残りやすく不快感の原因になるため注意が必要です。
“胃に残さず、即エネルギーになる補給”を選ぶのがポイントです。
OKな食材・飲料:
- エネルギージェル(ブドウ糖・マルトデキストリン系)
- 経口補水液(OS-1など)
- ハチミツ入りのゼリー飲料(コンビニで購入可能)
- スポーツドリンク(糖質+電解質入り)
- バナナ半本(固形物なら少量で)
NGな食材:
- サンドイッチ・パン類(脂質が多い)
- チョコレートやスナック菓子(消化に悪い)
- 揚げ物・ナッツ類(胃の働きを遅くする)
北野 優旗
「走る前の口寂しさを満たす」ことと「エネルギー補給」は違います。欲望ではなく、理性で選ぶ補給こそ、あなたの走りを支えます。
Q&A:食事に関するよくある疑問を解決!
ここでは、マラソン前日や当日の食事に関して、よくある疑問や不安をピックアップして解決します。ネット上でも多く見られる悩みですが、誤解されやすい内容も多いため、正しい知識を持つことが重要です。
「なんとなく不安」を解消することで、レースに集中できる環境が整います。
糖質制限中だけど大丈夫?マラソンと糖質の関係
糖質制限中のランナーでも、マラソン直前だけは例外と考えるのが基本です。
糖質制限が流行していますが、マラソンのような長距離有酸素運動には、糖質(グリコーゲン)が欠かせません。グリコーゲンが不足している状態で長距離を走ると、早期にエネルギー切れを起こし、パフォーマンスが著しく低下するリスクがあります。
糖質制限を継続している方でも、前日~当日だけは一時的に糖質をしっかり摂る「ターゲティッド・カーボイン」という考え方もあります。これは、必要なタイミングでのみ糖質を取り入れる戦略で、脂質代謝能力を保ちつつ、即効性のエネルギー源も確保できるハイブリッド戦略です。
北野 優旗
健康やダイエット目的の糖質制限と、パフォーマンス目的のエネルギー管理は分けて考えること。マラソンは「糖質ありき」で走る競技です。
食が細い人はどうすればいい?少量でも効果的な食事法
「たくさん食べること」が必須ではありません。エネルギー密度の高い食材を選ぶことで、少量でも十分な栄養を確保できます。
食が細い方は、無理に量を食べようとすると逆に体調を崩すことがあります。ポイントは「少量で高エネルギー&高吸収率」の食品を選ぶこと。液体や半固形、調理済みで消化しやすい食品はおすすめです。
少量でも効率よく栄養を摂る方法:
- 甘酒(米麹ベース):液体で糖質・アミノ酸が含まれる
- エネルギーゼリー:吸収が早く胃に残りにくい
- バナナ+ハチミツ:糖質&ビタミン補給が一口で完了
- おかゆ+梅干し:温かく胃にも優しい
北野 優旗
「食べる量」ではなく「食べたあと体がどう感じるか」が重要です。量にとらわれず、自分が快適に走れる状態を作ることを第一に。
サプリやスポーツドリンクは使ったほうがいい?
基本は「食事から栄養を取る」が原則ですが、補助としてサプリ・スポーツドリンクは非常に有効です。
たとえば、鉄分やビタミンB群は、エネルギー代謝や持久力の維持に欠かせません。マラソン前日は、普段以上に栄養消費量が高まるため、食事だけでカバーしきれない場合は、サプリの活用が推奨されます。
使ってもよいアイテム例:
- マルチビタミン・ミネラル
- マグネシウムやクエン酸
- BCAA(分岐鎖アミノ酸)
- スポーツドリンク(ポカリ、アクエリアスなど)
注意点としては「試したことのないサプリは避ける」こと。胃腸に合わないケースや、副作用が出ることもあります。
北野 優旗
サプリはあくまで「補助」であって「魔法」ではありません。基本はしっかりした食事管理が前提です。
レース中の補給食はいつ・どのタイミングで?
マラソン中は「20分~30分ごとに少しずつ」が基本。早め早めの補給が後半の粘りを支えます。
補給のタイミングが遅れると、グリコーゲンが枯渇し始めてからでは回復が間に合いません。小まめに補給し続けることで、血糖値の安定と集中力の維持につながります。
おすすめタイミング:
- スタート20分前 → エネルギージェル
- 10km地点 → 水+ジェルまたはバナナ
- 20km地点 → 経口補水液+ジェル
- 30km地点 → 甘いゼリー+水(後半の集中力補強)
北野 優旗
補給のタイミングを“体調に任せる”のではなく、“戦略的に決めておく”ことが重要です。練習でタイミングを試しておくのも忘れずに。
食後に眠くなるのはOK?避けるべき?
マラソン前日は「食後に眠くなる=自然な体の反応」ですが、昼寝しすぎは体内時計を狂わせるので注意が必要です。
特に前日は早起きをして朝食や昼食を早める分、午後に眠気が来るのは当然のこと。そのときは、15~20分程度の短時間の昼寝を「仮眠」として取り入れるのがおすすめです。
ポイント:
- 昼食後30~60分以内に仮眠をとる
- 部屋を暗くせず、座ったままの軽い仮眠がベスト
- 30分以上眠らない(夜の睡眠に響く)
北野 優旗
「眠気=疲労回復のサイン」です。仮眠をうまく使えば集中力と自律神経のバランスが整います。寝すぎないようにスマホのタイマー設定も忘れずに!
まとめ:万全の食事準備で最高のレースを迎えよう
ここまで、マラソン前日の食事に関する戦略を詳しく解説してきました。栄養バランスや時間帯、摂るべきものと避けるべきものを正しく理解し、実行することが、当日のコンディションとパフォーマンスを左右します。単に「よく走れる体」を作るだけでなく、「安心してスタートラインに立てる心の余裕」をもたらすのが前日の食事準備です。
以下に、これまでの内容を総まとめとして振り返ります。
マラソン前日の食事戦略まとめ
- 前日の食事は、マラソンパフォーマンスに直結する最重要項目。
- カーボローディング(糖質を意識的に多く摂取)は基本戦略のひとつ。
- 避けるべき食材(脂質・食物繊維・生もの・アルコール)を明確にしておく。
- 朝・昼・夕食すべてに目的がある。時間帯ごとに献立を工夫。
- 水分補給は、常温で、こまめに、適量ずつ。
- 体質や目標(完走・タイム狙い)に応じて食事をカスタマイズする。
- 当日はスタート3~4時間前に朝食を済ませ、軽食で補給を調整。
- 補給食や飲料は「事前に試す」ことが安心への第一歩。
心がけたいこと
- 「食べること」=「整えること」 食事は単なるカロリー補給ではなく、心身を整える“最終調整”です。無理に食べる必要も、制限する必要もなく、「自分の胃腸と会話するつもり」で選びましょう。
- 「完璧」を目指さず「快適」を目指す 人の体は毎日違います。「昨日は大丈夫だったのに今日は…」という不調もあるもの。だからこそ、「最大公約数的に安心できる食事」がベストです。
- 準備は食事だけじゃない 睡眠・ストレッチ・メンタルケアも「前日食」と同じくらい重要。食事準備を通して自分をケアすることが、走る自分への最高のエールになります。
最後に:マラソンは“前日”から始まっている
走ること自体は当日ですが、マラソンは「前日から始まっている競技」と言っても過言ではありません。走り出した瞬間に「体が軽い!」と感じられたら、それは前日準備がうまくいった証拠です。レースの成功は“体”と“心”の準備が揃ってこそ。
そして何より、無理せず、楽しんで走ってください。準備万端なあなたのレースが、最高の一日になりますように!
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