目次
等張性収縮とは
筋肉の収縮の一形態です。等張性収縮では、筋肉は一定の抵抗に対して長さを変えながら収縮します。
筋肉が収縮することによって力が入るという特徴を持っています。
その収縮の仕方は関節などの動きによって多少異なり、いくつかの種類があります。そのうちの一つが等張性収縮、別名アイソトニックコントラクションです。

等張性収縮(フルスクワット)
これは、動的な収縮運動の一つとされていて、積極的に筋肉を動かすことによって発生します。
ほとんどの場合は、関節を回転させる、伸ばしたり曲げたりすることによって筋肉が収縮する動きとなります。
日常的にも起きている収縮運動で、膝を曲げて腰をかがめるとか、肘を曲げて物を持ち上げるといった動作も等張性収縮によって行っています。
もちろん、トレーニングでもこの等張性収縮は非常に頻繁に見られる反応です。
ダンベルを肘を曲げ伸ばしして持ち上げるとか、膝を曲げた状態からウエイトを上げていくといったトレーニングをする時に等張性収縮が起きています。

ダンベルランジ(等張性収縮)
この種の運動では、基本的に筋肉の長さが大きく変わります。
というのも、関節を伸ばすことで筋肉は伸びていきますが、逆に曲げることで収縮します。
このように、単に収縮して基に戻るだけでなく、伸びる動きも入りますので筋肉の変化が大きくなるのです。
こうして強い刺激を筋肉に与えることができますので、より効果のでるトレーニングとなるわけです。
その他の筋収縮の種類

筋の活動様式図
等張性収縮と呼び方は似ているものの、特徴が異なる筋肉収縮はいくつかの種類があります。
そのうちの一つが等尺性筋収縮、もしくはアイソメトリックスと呼ばれるものです。
等尺性筋収縮(アイソメトリックス)
これは筋肉の長さを変えることなく力を出すことができる筋肉の収縮方法です。
関節を曲げ伸ばしていき力を入れるのではなく、関節を伸ばしたまま、もしくは曲げた状態で固定して力を入れることで筋肉を収縮するわけです。
その代表的なトレーニングが、や「空気いす」です。
ウォールシットとも呼ばれることがありますが、壁に背中を付けて膝を90度くらいに曲げて椅子に座っているかのような状態を作ります。

ウォールシット(空気椅子)
そして、そのままキープすることで筋肉に負荷をかけます。「プランク(フロントブリッジ)」というトレーニングも等尺性筋収縮ですね。
他にも、重い荷物を持ったまま立っているといった状態も、一種の等尺性筋収縮となります。
動きを入れないため、負荷をかけることができればそれだけでトレーニングとなるのが特徴です。
極端に言えば、身体機能に問題があって関節を動かせない方や、スペースがなくてほとんど体を動かせないところでも筋肉を鍛えられる手法でもあるのです。
等尺性筋収縮(アイソメトリックス)のトレーニング事例も合わせた詳細記事も参考にしてください。
等速性収縮(アイソキネティック)

等速性(Isokinetic)収縮:バイオデックス システム 4 BDX-4X
もう一つの筋収縮の種類としては、等速性収縮、アイソキネティックと呼ばれるものです。
これは、関節を動かすことによって筋肉を伸ばしたり縮ませたりするのですが、そのスピードが一定の状態で収縮することを指します。
筋肉は速いスピードでより力を発揮できることも、遅くした時に力が出ることもあります。
その特性を変化させたり強化したりするために、任意のスピードで等速性収縮運動をするのが有効なのです。
つまり、速筋を鍛えたいのであれば、速めのテンポで関節を動かし、遅筋を鍛えたいのであれば遅めのテンポを維持して筋肉を動かすという形です。
こうした三つの種類の中では、等尺性筋収縮が大きく特徴の異なるものです。
というのも、これは関節を動かさないで収縮させるものですが、他のタイプは基本的に関節を動かして伸び縮みを起こします。
こうした違いが大きく、関節を動かすトレーニングが比較的多いことを考えると、アイソメトリックスは筋トレの中では特別なものと言えるでしょう。
運動の等速性の概念
Helen J. Hislop, Ph.D., James Perrine
1967年2月1日
等張性収縮のメリットとデメリット

等張性収縮のベンチプレス
等張性収縮は、他の収縮タイプとは違うメリットとデメリットがあります。
その特性をよく理解することで、効果の高いトレーニング種目を組み合わせることができます。
メリット(利点)
メリットとして一番大きいのは、多様な運動負荷を筋肉にかけられるということでしょう。
関節の動きによって筋肉を伸長させた後すぐに収縮させることで、強い負荷を筋肉に加えられます。
また、その伸長と収縮の長さもダンベルの重さや可動域の幅などによって変えられます。
こうした変化も筋肉にとって多様な刺激となりますので、異なるアプローチをすることができるのです。
筋トレでは、同じトレーニングをしていると、なかなか筋肉が大きくならない停滞期が来ることがあります。
しかし、こうした異なる刺激を加えることで、順調に筋力を伸ばせるのです。
日常生活でも普通に使っている収縮運動ということもあって、様々なトレーニング方法が存在するのもメリットです。
自重だけでできるものもありますし、ダンベルやバーベルなどのウエイトを使うこともできます。
同じ肘や膝の関節を動かすとしても、その角度や曲げ方などによって異なる筋肉をターゲットとすることも可能です。
非常にバリエーションがある分、等張性収縮を使ったトレーニングを組み合わせやすくなります。
また、重さや速度を変えることによって負荷を変えられるのも等張性収縮のメリットです。
ウエイトの重量を上げることで簡単に筋肉への負荷を大きくすることができます。
スピードを速くすることによっても負荷は強くなる傾向にあります。
ただし、トレーニングの内容によっては速くすることにあまり意味はなく、むしろゆっくりと行った方が収縮による負荷がかかりやすいケースもあります。
とはいえ、このように等張性収縮は簡単に調整がしやすいので、それぞれの筋力に応じたトレーニングができます。
この観点から見ても、等張性収縮はトレーニングの種類を増やしやすいと言えます。
ウエイトやマシンの特性上、ゆっくりとしか関節を動かせない筋トレもありますし、逆にかなりスピードを出して動かせるものもあります。
他の収縮タイプだと、スピードの変化のバリエーションがあるトレーニングはそう多くはありません。
しかし等張性収縮の場合は、スピードの異なる種目がたくさんあって、バリエーション豊かなのです。
デメリット(弱点)

等張性収縮のデメリット
メリットが大きな収縮タイプですが、デメリットも存在します。
その大きなものが、ケガのリスクがあるという点です。
関節を大きく、速く、しかもウエイトを持って行うため、関節を痛めたり強く負荷が筋肉にかかったりして筋肉自体を損傷してしまうことがあるのです。
それだけに、この収縮タイプの筋トレを行う際には、正しいフォームで実施することと、自分の筋力に合ったウエイトやスピードで行う必要があります。
また、関節を大きく動かすため、ちょっとした関節の向きや角度、力の入れ具合によって鍛えられる筋肉が変わってくることがあります。
狙った筋肉に効果がなかったり、疲れるだけで実際には筋肉に効かなかったりすることも起こりえます。
等張性収縮のトレーニング事例
等張性収縮を利用したトレーニングは非常に多いです。
また筋トレ一覧からも等張性収縮種目は数多くありますので、どのトレーニングが等張性収縮に当てはまるか探してみてください。
では一部ですが、ご紹介します。
ミリタリープレス(オーバーヘッドプレス)
ミリタリープレスはバーベルを使って行うトレーニングで、頭上にバーベルを挙上して三角筋、大胸筋、上腕三頭筋を鍛えることができます。
上半身の肩や胸など一度でたくさんの筋肉を鍛えられるメリットがあります。

ミリタリープレス
姿勢 |
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方法 |
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回数 | 10回×3セット (初心者向け) |
ポイント |
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効果 |
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インクラインダンベルプレス
インクラインダンベルプレス(Incline dumbbell press)は、インクラインベンチに横たわった姿勢で、両手に持ったダンベルを上げ下げするトレーニングです。
ダンベルで負荷をかけることで、腕と胸の上部の筋肉を主に鍛えることができます。

インクラインダンベルプレス
姿勢 | スタートポジションのポイントは、やはりインクラインベンチの角度です。 角度が高いと肩へ、フラットすぎると腕と大胸筋の中部に、負荷が分散してしまうので気をつけましょう。 |
方法 | インクラインダンベルフライと同様
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回数 | 10回×3セット (初心者向け) |
ポイント |
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効果 |
インクラインダンベルロウ
ベントオーバーロウやワンハンドローイングでどうしても反動をつけてしまう方向けのトレーニング方法です。
効果はベントオーバーロウなどと同等です。
可変式のインクラインベンチが必要なトレーニングです。

インクラインベンチ ダンベルベントオーバーローイング
姿勢 |
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方法 |
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回数 | 10回×3セット (初心者向け) |
ポイント |
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効果 |
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ベンチプル
ベンチプルとは、ベンチ台にうつ伏せになり、バーベルを引き上げるトレーニングです。主に背中の広背筋をメインとし、僧帽筋や小円筋・大円筋も鍛えることができます。脚が一切使えないので背中でバーを引く動きだけに集中できるという特徴があります。

ベンチプル
姿勢 |
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方法 |
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回数 | 10回×3セット(セットの間隔は1分程あけましょう) |
ポイント |
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効果 |
当筋トレ効果のある筋肉各種 |
プルアップ

チンニング(懸垂)|別名プルアップ
姿勢 |
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方法 |
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回数 | 10回×2セット(セットの間隔は1分程あけましょう) |
ポイント |
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効果 |
当筋トレ効果のある筋肉各種 |
ラットプルダウン
ラットプルダウン(Lat Pulldown)は、トレーニングの一種で、主に背中の筋肉を鍛えるために行われるエクササイズです。
一般的に、専用のマシンを使って行います。

ラットプルダウン
姿勢 |
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方法 |
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回数 | 10回×2セットずつ(セットの間隔は1分程あけましょう) |
ポイント |
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効果 |
当ストレッチ効果のある筋肉各種 |
またフルスクワットも等張性収縮にあたりいます。
バーベルを担いだ状態で膝関節を曲げ、伸ばすことによって太もも周りの筋肉を収縮させることができます。
しっかりと関節を曲げることによって収縮の度合いが高まり、負荷を強くかけられます。
プルオーバー系の筋トレもやはりこの筋肉収縮タイプです。
ダンベルを使うこともありますし、マシンを使って運動をすることも多いです。
特にマシンを使うことで、負荷の度合いを自在に調整できますし、なによりもウエイトの落下や可動域を超えた動作とならないため、安全に運動できるというメリットが生まれます。等張性収縮のデメリットを減らして良い面を活かすのにはマシンを利用した方が良いとも言えます。
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