北野 優旗
皆さん、活元運動(かつげんうんどう)って知っていますか?
整体師トレーナーの私から、ちょっと不思議な運動をご紹介します。
活元運動を簡単に言うと、身体の不調を回復するよう自分の意思に関係なくひとりでに体が動いて体のバランスを整える運動です。
この筋肉を伸ばそうとか、縮めようとか思う必要はなく、自分に身を任せて動かしてもらいます。
自働運動という方もいらっしゃいます。
真理子
勝手に動き出す?
本当??信じられないんだけど。
あまり聞きなれない言葉だと思いますが、そんなちょっと不思議な「活元運動」について、詳しく説明していきます。
活元運動が怪しいものかどうか、研究論文をもとに、身体が勝手に動き出すメカニズムを解明していきたいと思います。
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目次
活元運動とは
「活元運動」とは、身体が自らバランスをとろうとして不随意に生じてくる動き
引用元論文:研究課題名「身体の動きから何を学ぶか:日米ボディワーク考案者の主張とその理論」平成24年5月31日
活元運動を分かりやすく説明すると、身体の不調を回復するよう自分の意思に関係なくひとりでに体が動いて体のバランスを整える整体運動のことです。
通常のストレッチやヨガなどの運動とも違います。
身体の歪みを改善したり、コリや痛みのある個所を回復するために人の手を借りずに、自ら勝手に動いて体のバランスを改善してくれるのです。
真理子
勝手に身体が動く!?
そんなことあるの?
身体の歪みまで整えてくれるの?
北野 優旗
体が持っている健康を保つ働きそのものを高め、引き出すことで活元運動が働き始めます。
不思議に聞こえると思いますが、そのメカニズムも後で詳しく説明しますね。
活元運動行った感覚は?実際に活元運動を行った動画
真理子
活元運動している時は、意識はあるの?
北野 優旗
意識は普通にありますよ。目も開けながら行うこともできます。
私も初めて、活元運動を行った時はビックリした記憶がありましたけど、今は、慣れて怖さは全くないです。気持ち良く活元運動ができます。
活元運動を行った感覚をお話しすると、最初はゆっくりとした動きから始まります。
さわさわとした感覚を感じます。
5分程すると、筋肉の収縮を感じ、動きや可動域が大きくなり始めます。
10分程継続するとさらに動きや可動域、スピードも大きくなりメリハリのある筋肉の収縮や弛緩運動が行われます。そして筋肉や関節へのストレッチが強くなってきます。
痛くもなく、心地よく勝手に整体をしてくれます。
自分でも思わぬ動きをするところが、面白いですね。
真理子
まだ、半信半疑だけど少し興味が湧いてきたなぁ
北野 優旗
実際に私が行った活元運動はこのような感じです。
首だけ活元運動が発動する方法で行ってみました。
【消音】 タップしてフィットネス動画を見る
真理子
首がいろんな角度に動いてますね。回したり、ひねったり。スゴ!
北野 優旗
部位的に行うQITANO式 活元運動です。後ほど部位的に活元運動を誘導させる方法についてもご紹介しますね。
活元運動の起源と歴史
活元運動は昭和20年代に野口晴哉 によって提唱された野口整体 の要素の一つです。
野口晴哉は関東大震災の時に手かざしや治療を行っていましたが、その経験から患者さん本人による、錐体外路性運動系を活性化させることで自己回復を促す方法を提唱しました。
錐体外路性運動については、のちの活元運動のメカニズムで解説します。
活元運動の目的
「活元運動 」
直接的に身体を鍛え上げる為ではなく、普段無意識的に働いている恒常性・人体の健康を保つ力を引き出すためである。
「活元運動」引用:ウィキペディア(Wikipedia)
北野 優旗
痛い場所を手で押さえる、くしゃみやあくびなどの人が自然に行う動作も、広い意味では活元運動の一種と言えます。
活元運動の効果やメリット
提唱者の野口晴哉氏は、活元運動の効果について以下のように論文で説明しています。
野口晴哉は、この不随意に生じてくる動きは日常生活の中でも欠伸や寝相、また異物を口にしたときに生じる王と反応等に見ることができると説明し、実践として「活元運動」を行うことで、さらに日常生活の中でも「敏感に」必要な時に活元運動が生じるようになると説明している。このことは錐体路(随意運動)をも良好にし、他者交流をスムーズにするとともに、熟練を要する身体的な技術の習得においてもカンの働く身体を作り出すという。
引用元論文:研究課題名「身体の動きから何を学ぶか:日米ボディワーク考案者の主張とその理論」平成24年5月31日
北野 優旗
また、私の個人的な感想ですが、活元運動を正しく行うことによって、健康増進にこんなうれしい効果を感じています。
- 身体のゆがみを整え姿勢改善
様々な動作を行う活元運動です。特に凝り固まった関節や部位に関しては入念に運動が行われ、ほぐしていきます。
腰痛や首の寝違えなど不調部位の緩和に最適です。 - リラックス効果
活元運動を行っている際は、気持ちが落ち着いた状態になります。首や肩の力も抜けてきます。すなわち、それは自律神経の副交感神経(リラックスする神経)が旺盛になった状態を示します。頭の中は空っぽにぼーっとしているだけで、体を動かしてくれるのでストレス解消にも役立つ運動です。 - 関節や筋肉の柔軟性が高まる
時間をかけて活元運動を行うことで、筋肉や関節の柔軟性は高まります。
徐々に動きが大きく変化し、緩急をつけた収縮と弛緩動作となり、ほぐれてきます。
強く収縮することもあり、そのあと、急にストンと力を抜くことで筋肉の特性を利用したPNFストレッチに似た動きも取り入れてきます。 - 運動不足の解消でカロリー消費
自分で意識して体を動かす努力をしなくても、体が勝手に動いてくれます。
身体を動かすことは、自動であれ、意識して動かすにすれ、必ずエネルギーが使われ、カロリー消費が行われます。
オートモード(自動)で身体を動かしてくれるため、楽にダイエット効果を生み出すこともできると思います。
活元運動は、呼吸をしながら時間をかけて行うので、無酸素運動ではなく有酸素運動の分類となります。
真理子
こんなに健康的な効果があるの!?
しかも、勝手に動いてくれるなんて、サイコー!
北野 優旗
でも、正しいやり方で行うことも大切です。
活元運動の正しいやり方も合わせて解説しますね。
まずは、今回の記事の本題である活元運動のメカニズムを解説します。
真理子
活元運動が、怪しいとか、嘘とか言っている人もいるので、「根拠」をぜひ教えてください。
活元運動のメカニズムを解説
北野 優旗
ここからは、聞きなれない専門用語も含めての解説となります。極力かみ砕いてお伝えしていきますので、よろしくお願いします。
活元運動は、「錐体外路性運動系を健全化・活性化させることによる自己回復法」と説明してきましたが、まず「錐体外路性運動系」とは何かを説明していきます。
大脳皮質の運動野から出る運動指令の下行路には、運動の指令を自分の意志のままに筋肉に伝える錐体路と、無意識的に筋の緊張や微妙な筋の動きの調整にかかわる錐体外路の2つがあり、互いに協力しながら骨格筋の運動を調整しています。
特徴 | 錐体路 | 錐体外路 |
---|---|---|
機能 | 随意運動の制御 | 運動の調節、筋緊張、姿勢、平衡を含む |
起源 | 脳の運動野 | 基底核、脳幹、小脳などのさまざまな脳領域 |
経路 | 脳幹および脊髄を通って下行 | 異なる脳領域を結ぶ複数の間接的な経路 |
終止点 | 脊髄内の運動ニューロンと直接シナプス形成 | 運動ニューロンに影響を与える間接ニューロンとシナプス形成 |
運動開始の役割 | 随意運動を直接開始 | 錐体系によって開始された運動を調節および改善 |
引用:【2022年最新】錐体路・錐体外路の経路と機能 ㈱ニューロリハビリ研究所
錐体路
大脳皮質の運動野から出て、運動を自分の意志のままに骨格筋まで伝える下行性神経路が錐体路図1です。
図1 錐体路
北野 優旗
つまり、歩く動作を例にあげると。
歩くために自分の意志のままに「足を前に出す」という動きが錐体路性の運動(随意運動)です。
錐体外路
錐体路以外の運動指令を伝える神経路を錐体外路図2とよぶ。
図1 錐体外路
自分の意志で行う「随意運動」と対比されます。
運動をコントロールする神経経路の本幹が「錐体路」であり、それを補完する神経経路の代表として「錐体外路」があります。
北野 優旗
つまり、豆を箸でつまむなど微妙な動きを上手にできるのは、手や腕の筋肉群に錐体外路系の協調運動が働き微調整しているからです。
- 姿勢筋緊張の調整
- 不随意運動のための原因となる持続的な緊張
- 随意運動をより自然に、より正しく動作を実行する
- 筋緊張や動作の自動的な調整
- 感情的・注意的な状況への反応に伴う反射の制御(リアクション)
- 元々随意であった動作が、運動学習によって自動化された動作の制御(例:筆記など)特に錐体外路疾患に顕著な不随意運動の抑制。
引用:【2022年最新】錐体路・錐体外路の経路と機能 ㈱ニューロリハビリ研究所
活元運動の原理は、錐体外路性運動の健康を保つ働き
北野 優旗
活元運動の提唱者 野口氏や研究者BMC公認指導者レンバーグ氏は以下のように活元運動の原理を説明しています。
野口晴哉の説明する「活元運動」とは、身体が自らバランスをとろうとして不随意に生じてくる動き(=活元運動)を積極的に経験することで、大脳皮質(意識)から信号によらない運動感覚刺激の通り道である錐体外路系を「鍛える」実践であると説明することができる。
BMC公認指導者レンバーグ氏
活元運動の原理については、「神経の逆戻りの解除(the dereversal of nerves)」と説明する引用元論文:研究課題名「身体の動きから何を学ぶか:日米ボディワーク考案者の主張とその理論」平成24年5月31日
北野 優旗
つまり、人間が本来もつ自然治癒力や自分の身体の健康を保とうとする働きが、錐体外路系に備わっていて、活元運動が発動するというメカニズムですね。
真理子
錐体外路系ってすごいですね!健康を保とうとしてくれるなんて!
私も活元運動にチャレンジしたくなりました!
北野 優旗
メカニズムを理解すると安心するし、怪しいという疑いもなくなりますね。
真理子
そうですね。もう、なんの疑いもありません。ぜひ教えてください!
北野 優旗
正しいやり方が大切なので、手順と注意点はしっかり確認しながら行っていきましょう!
基本的な活元運動のやり方と注意点
以下の内容に沿って活元運動の正しいやり方を詳しく解説した記事となります。
ぜひご覧になって活元運動を楽しんでみてください。
- 活元運動の正しいやり方と誘導法
- 活元運動の解除方法
- 注意点や適切な環境の設定
北野 優旗
応用として、QITANO式 活元運動もこちらで紹介しています。
【応用編】QITANO式 活元運動|カラダの部位ごとに活元運動を誘導する方法
北野 優旗
QITANO式 活元運動ではカラダの部位別に行うことができます。誘導方法も簡単です。
椅子に座りながら、首だけであったり、肩だけで活元運動を行うことができます。
真理子
ソファに座りながら、ぼーっとできるのは便利ですね!
全身が勝手に動き出さないから、転倒リスクもなく安全に行えますし、広い床のスペースもいりません。
初めて、活元運動にチャレンジしようとする方にも、実は向いていますね。
最初から全身が動き出すのは、怖いなぁと思う方はQITANO式 活元運動で、自分の気になる部位から初めてみるのも良いですね。
北野 優旗
症状に合わせて部位的に行う「QITANO式 活元運動の誘導方法」に興味のある方は以下のページで紹介しています。
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